『言っとくけど、ユタ州にはチンポコ(を連想させる風景)が山ほどあるのよ(There are so many penises in Utah... I have to tell ya!)』とローラは言った。やや唐突に。そして携帯電話を取り出し、もっといいのがあるんだけどなぁと言いながら、ほらっと見せてくれた。

ほんとうだ。

ユタ州南東部に位置するアーチーズ国立公園内にある、ユタ大学が所有する野営地でローラは去年の大半を過ごした。最寄りの町モアブ(Moab)まで車で一時間という人里離れた場所で、野鳥研究のアシスタントをしながら、仕事の合間に州内の様々な大自然の見どころを訪ねて廻ったという。

ちなみに、フェニックスからモアブまでは車で7時間ほどかな、とローラは教えてくれた。ローリンが地図を持ってきてくれたので一緒に見てみると、確かにユタ州南部には、いくつもの国立国定公園が南西から北東に数珠つなぎのように並んでいる。ザイオン国立公園など、有名なものは聞いたことがあったが、こんなにたくさんあるとは知らなかった。

ローラと前回会ってから、もう4−5年がたつ。当時、州内の不法移民収容センターに収監されていたギニア人のボーイフレンドを訪ねるというので、アフリカンドラムコミュニティーのお母さんとお父さん的存在であるローリン・バーントと何度か同行して以来だ。収監中に結婚し、米国に留まることができるよう嘆願をつづけたが、希望はかなわず本国に送還されてしまった。その後ローラもアリゾナを離れてカリフォルニアやユタを転々としていたらしい。今も住まいは定まらず、初めて知り合った時から変わらないスバルとともに放浪を続けている。またアリゾナに帰ってきたいなぁ、とローラは言った。今夜はローリン・バーント宅に一泊だけして、明日はフラッグスタッフに向かうという。

(つづく)

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