思いがけない出会い〜ホピ、オライビ村にて

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気がつけばもう10月。8月25日の投稿を最後にブログをすっかりサボってしまった。その間を振り返って、書き留めておきたいことをぽつぽつとアップしようかなと思う。

9月第一月曜はレイバーデイの祝日。アメリカでは貴重な3連休になる。毎年家でだらだらと過ごすことが多いけど、アリゾナ北部を2泊3日でドライブ旅行に行こうと思い立った。金曜の午後遅くに家を出発し、その晩はウインスロー(Winslow)泊。土曜はホピネーションのセカンドメサを経由して、グランドキャニオン・ノースリムまで。日曜の晩にフェニックスに戻り、月曜は骨休めをしようと予定を立てた。州内とはいえ、全行程1300キロ。

旅に出ると思いがけない出会いがある。そしてそれこそが旅をする醍醐味で最大の喜びだ。

幸運にも、今回の旅行は、「ホピの村々で祭りの儀式が開かれる特別な週末」だと現地に到着して知った。村々で歌と踊りを交えた儀式が行われ、外に出て住んでいる親族が戻ってきて賑わっている。日本のお正月かお盆のような雰囲気だろうか。

ホピ族の祖先が初めて地下から地上に出てきたという神話の地として知られるオライビ村に立ち寄った。遅めの昼ごはん時で儀式は一時お休み中。あてどなく小さな村をひとり歩いていたら、ニューメキシコ州アルバカーキに住み、このお祭りで一時帰省しているという女性が声をかけてくれた。儀式が再開するまでしばらく時間があるし、外は暑いから、家に来てごはんでも食べなさいよと誘って頂いた。

村にひとつだけあるギフトショップを営むご家族で、最近増築したというお宅は村ではかなり広いほうだと思われた。近隣の畑で収穫されたコーンと羊の肉を使ったスープをごちそうになる。ネイティブアメリカン系とはいえ御家族と一切関係ないおじさんもいっしょで、外からの訪問者への快く門戸を開いてくれる、開放的なお祭り気分がじわーっとぼくにも伝わってきた。

さー、そろそろ儀式が再開するわよ、と誘われるままに村の広場へ。四方を民家に囲まれ、50メートルプールがちょうど入りそうな、けっして大きいとは言えない空間を、数百人の拡大村民と、いくらかの部外者が所狭しと取り囲んでいる。一部の観衆は民家の屋根の上から広場を見下ろしている。ぼくもお昼をお呼ばれした御家族がキープしているという屋根の上のパイプ椅子に座って儀式を観る。

広場の中心では、数十人の男性合唱+太鼓隊と民族衣装をまとった男女8人のダンサーが歌と踊りを始めていた。声明のような音楽。日本仏教のお経を倍速にしたようなドラムに合わせて、お経を読んでいるようにも聴こえる。短いフレーズを繰り返している風でもないので、長ーい歌詞を皆覚えているのかなと感心した。村の成人男子数十人が一緒に歌う力強い響きに圧倒され、自分たちの伝統を守っていこうというホピ族の誇り高いプライドを観るようで、目頭が熱くなる瞬間があった。

儀式の途中、ふと後ろ上方を見上げると、日本人とおぼしき3人組が一段高い民家の屋根の縁に座って足をぶらぶらさせながら儀式を観ていることに気づいた。話かけてみるとやはりそうで、なんとそのうちのお二人は、ご夫妻でオライビ村からほど遠くない別のホピの村に17年も住んでいらっしゃるという。もうひとりはご夫妻の客人だった。別れ際に、よかったらこれから我が家に来て泊まって行きませんかと誘っていただいた。はげしく心を揺さぶられたが、初対面でそこまでご好意に甘えてもと思い、お断りした。また別の機会に遊びに来てくださいねとご親切に言っていただいてうれしかった。

(ご主人がお好きだという)清酒「男山」の一升瓶を持って近いうちにお伺いしようと、後ろ髪をひかれる思いで、村を後にした。


備考:
ホピの村々では、写真撮影は一切禁止されている。ホピの人たちの気持ちは分かるが、ぼくは写真が撮りたいのに撮れなくて欲求不満。残念だ。

*REVOLVER dino network 投稿 | 編集