普段は日常に追われて、遠い将来のことを考えずにいる。
でも、時々、終の住まいはアメリカになるか、日本になるのか考えることがある。
もし、アリゾナを引き払って、いつか日本に帰ることになれば、その時には遠回りをして帰りたいと思う。できるだけ飛行機を使わず、地を這うようにして。
と、考え出したら妄想が広がってきた。
アリゾナを出発すれば、メキシコはすぐだ。中米を縦断して南米に行ける。アンデスの麓、テルメ・デ・パンキのダニエルは元気に温泉守をしているのだろうか。
ブラジルまで行けば、西アフリカまで飛行機で飛べるだろう。ギニアからマリへ。そしてサハラ砂漠を越えれば、モロッコのマラケシュにつけるかもしれない。
タンジールからフェリーでスペインに渡って、西へ向かえば、ヨーロッパ最西端のポルトガル。
そこからはユーラシア大陸を一路東へ。最後は台湾から海路で沖縄を経由して、遠回りの旅を締めくくりたい。
道々、立ち寄りたい友人たちのことや、昔訪ねた様々な場所のことが頭に浮かんでくる。
10年、20年後の世界はどんなになっているのだろう。シニア・バックパッカーがそこそこ自由に旅行できるような状況であってくれるのだろうか。
そして、夫婦ともに旅ができるような健康な体でいること。でっぱったおなかにそっと手をあててみる。
(つづく)
連日、ガザやウクライナ内戦のニュースが報じられている。たくさんの人たちが、自分たちには何の非もないのに、大きな不条理に巻き込まれて殺されている。こんな時に、のほほんと自分の将来の旅行のことなど妄想していていいのだろうかと、後ろめたさを感じながら、なにもできない自分がいる。