辛い時間は永遠に続かないし、家族や愛する人と過ごした幸せな時間は淡く過ぎ去って戻ってこない・・
死は気づかないだけで日常に溢れているし、次は自分の番かもしれないよ・・
そう思えば、今生きているすべての一瞬が愛おしく貴重なものに感じられるんじゃないかな・・
そう語りかけているような気がする。
2001年から5年続いた「Six Feet Under」というテレビドラマシリーズが、Amazon Prime Instant Videoで無料で見られるようになっているのを見つけ、10年ぶりに観直している。
ロサンジェルスで小さな葬儀社を営む家族と、その家族に関わる様々な人たちの人間模様を描いた現代の物語。死とどう向かい合うか、ゲイの社会的認知、精神障害の息子を抱える家族、高齢者の性愛といった、これまで公の場で語ることがはばかれることの多かったテーマも扱っている。
いきなり第1話で死んでしまった父や、毎回登場する新手の死人たちが、唐突に主人公の前に現れて話しかけたり、主人公たちの妄想がフラッシュバックのように挿入され、生と死、現実と非現実のあいだをゆらぎながらストーリーが展開する。
ちなみに、タイトルのSix Feet Underとは、棺桶を埋葬する際の深さだと聞いた。
ゲイのことひとつ取ってみても、初めてこのドラマを観たときは、ゲイのキスシーンに生理的な嫌悪感を覚えたが、今回観直してみると、そうでもない。映像が脳内をするっとスルーしている自分に気づく。
デイビッドとキースというふたりの人間が互いを愛するがゆえに葛藤する姿が、まっすぐに、時に切なく、時間をかけて丁寧に描かれていて、そんなふたりへの共感が、ふたりがともに男性であるということより重要に思うようになったという、心境の変化かもしれない。
このようなドラマがきっかけとなって、頭の中の価値観が少しづつ変わっていく。毎日の生活もどこか違って、新鮮に見えてくる。優れたドラマにはそんな力があるような気がする。
(第23回)
【追記】
- six feet under
埋葬されて、死去して◆【語源】死体を埋めるための穴の深さが6フィートということから
・Although you were cured, sadly your brother was already six feet under. : あなたは治りましたが、残念ながら弟さんは亡くなりました。
(出典:英辞郎)
今の今、はじめて気づいたんだけど「辛い」と「幸せ」というふたつの漢字、そっくりだ。
タイトル写真の出典:www.tv-calling.com