横断歩道を渡ると、確かに1時間時計が進んでいた。同じ町の中なのに道路ひとつはさんで北と南で時間が違う。おかしいでしょ!

昨年、長い夏が終わりようやく過ごしやすくなってきた10月初め、週末を使ってナバホ・ホピ族居留地を久しぶりに訪れる機会があった。夜もだいぶ遅い時間に、予約をしていたトューバ・シティー(唯一?)のホテルにチェックインする。どういう話の流れだったのか、フロント係の女性ふたりが、「ところでホテルの前を走っている道路を渡った反対側は1時間時間がすすんでいるんですよ」と教えてくれた。ひとつの国がいくつかの時間帯にまたがっている例は、アメリカをはじめ数々あるけれど、ひとつの町がふたつの時間帯にまたがっているなんて聞いたことない。

百聞は一見にしかず。ホテルの時計は午後9時すぎなのを確認して、いざ道路を渡り、向かいのコンビニにはいって時計を見上げると、ほんとだ、10時すぎを指している。興奮しながらホテルに戻って、びっくりしたと伝えると、どうしてこの旅行者はこんなに興奮しているのかしらという表情で「ずっーと住んでいると慣れてきます」と応えが返ってきた。とはいうものの、ひとりは南側に住みながら、北側にある保育園にお子さんを預けているので「ちょっと困ることもあります」とも。

道路の北側はナバホの人たちが住んでいて、ナバホ居留地の時間に準拠。ナバホ居留地の時間はユタ州時間でもあり、サマータイムあり。対して、道路の南側はホピの人たちが住んでいて、ホピ居留地の時間に準拠。ホピ居留地の時間はアリゾナ州時間でもあり、サマータイムはなし。という理由で、夏場の間、町にはふたつの時間があります、と説明してくれた。

今日、このことを思い出して、グーグルマップで改めて町の地図を見てみた。なーるほど。ホピの人たちが住んでいる南側は、ホテルを含めて、正確にはトューバ・シティー(Tuba City)ではなく、モエンコピ(Moenkopi)という別の町なんだ。

トューバ・シティーは、アリゾナ州北部の中心地、フラッグスタッフ(Flagstaff)からルート89号を北上し、ユタ州との州境にあるペイジ(Page)まで向かうほぼ中間地点から、モニュメントバレー方面に向かうルート160に入ってしばらく行ったところにある。グランドキャニオンのほぼ真東になる。

(第13回)

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