雨季の到来とともに、時としてハブーブ(haboob)と呼ばれる大砂嵐が来る。砂煙が高さ数十メートルの巨大な壁のようになってフェニックスの街に押し寄せてくるところを、ビルの5階から偶然見たことがあるが、SF映画のようでこの世のものとも思えなかった。

2011年7月上旬、サンディエゴからフェニックスまでドライブをする機会があった。その途中でハブーブに遭遇した。

サンディエゴから東に向かってインターステート8号を走ると、すぐに西海岸の沿岸部と内陸部を隔てる山々に分入る。その山々を越え、最後のストレッチを下りていくと、突然目の前に広々とした盆地が広がり、坂を下りきったところに無人の休憩所がある。そこに車を止めて午後遅い風景の写真を撮っているうちに東の雲行きが怪しくなってきた。砂嵐がどんどん近づいてくるのがよくみえる。そのうちすっぽりと砂嵐に飲み込まれ、視界はほとんどゼロに。やがておさまると、鮮やかな虹が出て、そのうち薄い膜がかかったような夕焼けが広がった。

フェニックスに帰ったら、すごい蕁麻疹がでてきて1週間ほど難儀した。きっとハブーブのせいだと思う。

(第10回)

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