集団的自衛権に基づく日本の武力行使に関するメモ

ブログ

7月3日放映のクローズアップ現代をYouTubeで観る。以下、動画のリンクとメモ書き。

1.クローズアップ現代(7月3日)のまとめ〜自衛権に関わる憲法解釈変更について

【集団的自衛権に関する従来の政府見解】

ベトナム戦争下の昭和47年(1972)、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという解釈を、日本政府(田中政権)は初めて示した。
以降、中曽根、鈴木、小泉など、時の総理大臣によって、同じ見解がたびたび国会の場で示されてきた。

【安倍政権による新たな政府見解】

集団的自衛権による武力行使は解釈上、限定的に容認できるという解釈変更を、今回安倍政権は閣議決定した。その上で、以下の限定要件を示した。これら3つの要件がすべて満たされた場合に限って、武力行使は合憲であるとしている。

  1. 日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が派生し、日本の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
  2. これを排除し日本の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がないこと
  3. 必要最小限度の実力を行使すること

政府はあくまで安全保障政策の根幹をなす、「専守防衛」、「武力行使は自衛のために限る」という方針に変わりはないとしている。しかし、今回の閣議決定では、自衛隊の任務がどこまで拡大するのか、具体的なことは示されなかった。時の政権が総合的に判断する、としている。

【菅官房長官の発言ポイント】

  • 他国を守るための戦争には参加しない。
  • 今回の解釈変更によって、抑止力が高まることを狙いとしている。
  • 「日本と密接な関係にある他国」とは同盟国である米国は該当する。米国以外ついての判断は、その時々の政権に委ねる。
  • 新3要件によって、武力行使への「歯止め」は保証されている。
  • 新解釈に沿って「すきまのない法制度」をつくるべく、新たな法案を今後国会に提出する。

2.定義(ウィキペディア)

自衛権
自衛権とは、急迫不正の侵害を排除するために、武力をもって必要な行為を行う国際法上の権利であり、自己保存の本能を基礎に置く合理的な権利である。国内法上の正当防衛権に対比されることもあるが、社会的条件の違いから国内法上の正当防衛権と自衛権が完全に対応しているわけでもない。他国に対する侵害を排除するための行為を行う権利を集団的自衛権といい、自国に対する侵害を排除するための行為を行う権利である個別的自衛権と区別する。

集団的自衛権
集団的自衛権とは、ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である。その本質は、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処するというところにある。

3.感想

武力行使の新3要件を読む限り、武力行使の歯止めが保証されているとは考えにくい。「密接な」、「根底から」、「明白な」、「適当な」、「必要最小限度」といったあいまいな表現が多く、政権による裁量の余地があまりにも大きすぎる。米国からの協力要請があった場合、日本政府がそれを拒否できるだろうか。多分できないだろう。実効性のある歯止めをかけることができるかは法律の条文次第だが、これまでの動きからすると期待薄。

現在の議論から少し距離をおいて白紙ベースで考えるなら、個人的には(この問題についてはまったくの素人の感想として)、以下のような「歯止め」も有効だと思うのだが・・・

  • 集団的自衛権による武力行使は、国連決議による軍事行動・平和維持活動に限って参加できるものとする。(米国単独の要請では参加できない)
  • (今でもそうなっているんだろうとは思うが)国会による事前承認を要する。その場合、過半数ではなく、3分の2もしくは4分の3以上の賛成を必要とする。
  • シーレーン防衛については、個別的自衛権の範疇に含めることで軍事行動を合憲とする余地をつくる。
  • 個別的もしくは集団的自衛権による武力行使に関わらず、先制攻撃は例外なく違憲とする。
  • 以上の方針は、憲法の解釈変更ではなく、憲法改正の手続きを踏むことで国民の合意とする。

・・・あ〜っ、肩凝ってきた。

(第40回)

【追記】
7月13日放映のNHKスペシャル「集団的自衛権 行使容認は何をもたらすのか」を視聴する。
集団的自衛権行使容認の背景に、米国政府からの要請があることは、クロ現ではあまり触れられていなかった点だ。
東アジア、例えば朝鮮半島有事の際に、米軍に協力して、今まで以上に積極的な軍事的役割を自衛隊に果たしてもらいたいというのが米国政府の本音のようだ。「協力」、「連携」、「統合」いった耳あたりのよい言葉が使われているが、事実上、米軍主導の軍事行動の一翼を担うということだろう。日米の国益が一致する限り、それでも問題はないのかもしれない。しかし、たとえ同盟国であっても異なる国である以上、国益が一致しない事態も起こりうるだろう。その時、日本の政治は自国の都合を優先して行動できるだろうか。

*REVOLVER dino network 投稿 | 編集