この20年、アフリカ・南米を旅し、自国ドイツではプロのパーカッショニストとして活躍しながら、ハーマン・カタン(Herman Kathan)はグルーブの本質について考え続けている。
グルーブとは何かと説明しようとすると、ぴたっとくる日本語がでてこない。溝のような、ある種心地よいスイートスポットにすっぽりはまって、波のうねりのようにゆらゆらとすすんでいく感じかな。
ハーマンによれば、グルーブは正確なビートからくるのではなく、微妙なゆらぎからくると。なぜある種のゆらぎを心地よいと感じるのか。それは胎児の時に聴いていた母の心音を深いところで思い起こすからではないかと。たしかに心臓の鼓動は微妙にゆらいでいるかもしれない。
西アフリカ・南米の伝統的なパーカッション音楽が創りだすグルーブには、このゆらぎと、どこか共通するものがあるのではないかと。そして、ある種のグルーブがこころの深いところにに特別な働きかけをするのではないかと、ハーマンは考えている。
ハーマンはまた、こんな面白いことも言っていた。普段はゆらいでいる心臓の鼓動だが、死ぬ間際になると、ゆらぎが失われメトロノームのように鼓動する瞬間があるという。そして、人はそのような正確な鼓動を心地よいと感じないのだそうだ。自分で体感したことがないので、にわかにはわからないが、ありえないこともないなと思った。
今年3月にアリゾナで開かれた彼のワークショップ "7-Days of Groove" から。
(第26回)
【追記】
ウィキペディアによれば、